2015年に公演披露された乃木坂46メンバーが多数出演した「すべての犬は天国へ行く」を今さらながら鑑賞した。
なぜ今さらかというと、乃木坂46「すべての犬は天国へ行く」は「のぎ動画」で見れたからだ。
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約7年前(現在は2022.2月)の作品であるが「乃木坂メンバーのポテンシャルの高さ」に驚いた。
また、観劇して色々と考えさせられるアート作品であったので、今回は乃木坂46メンバーが出演した「すべての犬は天国へ行く」についてご紹介したいと思う。
*あらすじや感想などは「ネタバレ要素」があり、見る前にバイアスがかかる可能性があるので、とりあえず作品をご覧になることを推奨します
すべての犬は天国へ行くあらすじ
「すべての犬は天国へ行く」は、ケラリーノ・サンドロヴィッチによる戯曲
殺し合いの果てに男たちが死に果て、女だけの町となったアメリカ合衆国西部の町のお話。
古びた居酒屋を舞台に、残された女たちの狂気を「シリアスかつコミカル」に描いた西部劇である。
西部開拓時代、ある町の居酒屋兼娼館で小間使いの母子が掃除に来るところから物語は始まる。
男たちは殺し合いで皆死んでしまい残された女たちは途方に暮れ「男たちがいた時のように振る舞い続ける」のだが、町の奇妙なバランスが女たちを蝕んでいき壊れていく…
シリアスとコミカルを表現する必要があり、乃木坂メンバーには難しい作品であったのではないだろうか。
しかしながら、乃木坂46加入「3年前後」で見事に演じきっている。そのメンバーをご紹介したい。
犬メン乃木坂メンバー
「すべての犬は天国へ行く」に出演した乃木坂46メンバーは通称「犬メン」と呼ばれる。
「すべての犬は天国へ行く」はシリアスとコミカルを表現する難しい芝居であったため、それに出演したメンバー間に強い絆を生んだようである。
とくに、コミカルなシーンでは共演者同士の「間(ま)」が重要であり、1人だけの芝居では成立しないからだ。
そんな難しい芝居を見事に演じきった犬メンをご紹介しよう。
桜井玲香(医者の妻役)
医者の妻役ということで、華やかなな衣装で登場する。その衣装がとても似合っており「役もハマり役だった」と感じる。
普段は「ポンコツ」と呼ばれる乃木坂46キャプテンの桜井玲香であるが、実は歌唱力もダンス技術も高く芝居もかなり良かった。
是非、彼女の演技をご覧いただきたい。
乃木坂46卒業後も舞台の世界で活躍している。
生駒里奈(知能が未成熟な女の子役)
物語で1つのポイントとなる重要な役どころ。
「知能が未成熟な17歳の女の子」という難しい役どころであるが、見事に最後まで演じきっている。
伊藤万理華(居酒屋の娘役)
口の悪い皮肉屋の役で「物語のスパイス的な要素」を担っている。
基本的に、共演者に罵声を浴びせるのだが、その「言い回し」や「声の抑揚」で存在感を示している。
口の悪い皮肉屋であるが、衝撃のラストが待っている…
井上小百合(早撃ちガンマン)
物語のポイントとなる役どころ。シリアスとコミカルの両方を演じており、個人的に彼女のポテンシャルの高さにびっくりした。
現在(2022年)も舞台で活躍してるのが納得できる。
斉藤優里(心優しい不良役)
暴力性と繊細さの二面性を表現する難しい役どころ。
演劇初挑戦の彼女には難しかったといわれているが、そこまで演技力が無かったという印象はない。
ただ、芝居のインパクトがなく特筆するところはない。
新内眞衣(売春婦・新聞屋役)
約7年前(現在は2022)の新内眞衣さんは23歳。乃木坂46に加入して2年前後で、色っぽい売春婦役を見事に演じている。
後半には、マジメな新聞屋役という真逆の役どころであるが、こちらも良かった。
現在の彼女なら違う役どころも演じれる気がする。
松村沙友理(保安官の娘役)
16歳の保安官の娘役。純朴な役どころで彼女のイメージと近いものを感じた。
新内眞衣さんと同様に今の彼女なら違う役どころを演じれるであろう。
個人的には、純朴な役どころから狂気に変わるような役がハマりそうな気がする。
若月佑美(酒場の娘、伊藤の姉役)
物語の中では他の演者の発言や行動を受ける役どころ。お笑いでいえばツッコミ役。
相手ありきの演技となるので難しい役どころに感じた。「間」1つで笑えるか笑えないかとなるので重要な役であったが、彼女は見事に演じておりその後のドラマなどでの活躍に納得した。
「すべての犬は天国へ行く」ネタバレ感想
「すべての犬は天国へ行く」をあらすじなど全く知らずに見たので、題名からてっきり犬の話なのかと思っていた。
犬も少し登場するのだけれど、鑑賞して感じたことは「舞台で起こってることは私たちの日常でもある」ということだ。
「すべての犬は天国へ行く」では多くの社会問題が表現されている
「すべての犬は天国へ行く」から感じた社会問題は、売春問題、貧困問題、障がい者差別、人種差別、アルコール依存性(すべての依存性)、医療ミス、幼児虐待、わいせつ行為、ジェンダー問題、不良といじめやレッテル貼り、動物虐待など多くのテイストが盛り込まれ、それらが物語で登場する人の行動「トリガー」の1つになっている。
人は誰もが「正義」や「行動する動機」をもっている。それは、他人や社会からは悪とされることであっても。
法律を破ることを正当化するわけではないが、誰でも「狂気に変わる可能性を秘めている」と感じた。それは、個人でいえば「犯罪」「SNSでの誹謗中傷」などにあたるが、国家レベルでいえば「戦争や略奪・テロ」なども同様である。
なので、普段から意識的に「人の心の闇に紛れている狂気を抑え込む」または「楽しいことを考える」必要があることを表現していると感じた。
現実逃避と自己実現
「男たちの死」を受け入れることができない点からは、わたしたちも日常の暮らしで同様に「何かを見ないように生きている」のではないだろうか。
現実逃避は「楽しいことを想像」または「体験すること」でストレスを軽減する面もあるが、人生の分岐点となる場面で逃避し続けると人生がまったく進まなくなってしまう。
「すべての犬は天国へ行く」の面白いところは、男たちの死を認め『現実逃避をやめよう』と町を出ようとした女を亡き者にしてしまうところに実社会のリアルさを感じる点である。
亡き者とするのは芝居の中での表現であるが、わたしたちの実際の暮らしの中でも「足を引っ張る人」はいる。
現在の暮らしを変えるために、何かに挑戦しようとする人に対して「成功するの?大丈夫?失敗したらどうするの?」などの言葉を浴びせて現在の暮らしに留まらせようとするアレだ。
本人に悪気はないのだろうが、心の底には「わたしより幸せになるなんて許せない」という人の心の闇があるのではないだろうか。
現実逃避を「コンプレックスが原因」と視点をかえるならば、自己実現のために心理学者ユングが提唱する「コンプレックスとの対決」を行わなければならない側面も感じた。
ユングの心理学について詳しくはこちら
https://sinrigakusaron.com/sinrigakunyumon-konpurextukusu-kawaihayao
「すべての犬は天国へ行く」題名の「犬」の意味
「すべての犬は天国へ行く」の物語の中で『犬の年齢は人の年齢では何歳?』のやり取りが出てくる。
そのシーンはコミカルに描かれているが『犬の命と人の命は違うの?』というセリフがあり、死んだ犬と人の死体を同じところに埋めて『一緒に天国に行けるね』というセリフもあった。
以上のことから「犬=人」だと考えられる。
「天国へ行く」は「死」を表しているのだが、これらをストレートに題名にすると「すべての人は死ぬ」になってしまい物語の内容がほとんど分かってしまう。
なので「犬」と「天国へ行く」という言葉を使ったのではないだろうか。
「すべての犬は天国へ行く」乃木坂3・4期生の再演に期待
観る人の視点で大きく印象が変わる「すべての犬は天国へ行く」は色々考えさせられるし面白い作品であった。なので、是非とも乃木坂46三期生・四期生で再演を見てみたい。
乃木坂46三期生・四期生は、コント番組乃木坂スキッツで「お笑いの間」を経験している。また、三期生は「見殺し姫」四期生は「プリンシパル公演」などで舞台経験があり、次のステップとして挑戦してほしい。
また、7年前に披露された「すべての犬は天国へ行く」では、乃木坂メンバー以外の「物語で重要な役どころ」を女優さんが演じている。
再演されるなら、以前は女優さんが演じていた役どころを「乃木坂46OGメンバー(犬メン)」に演じてほしい。
犬メンは全員が乃木坂46を卒業しており、ソロで活動しているメンバーがいる。7年間の成長と三期生・四期生の挑戦を感じられる作品となるだろう。そして、この現役メンバーとOGメンバーのコラボを「乃木坂46の1つの形」としてほしいところである。
まとめ
今回は、乃木坂46メンバー出演「すべての犬は天国へ行く」について色々と考察してみた。
やはり乃木坂46が素晴らしいのは「アーティスト」であるということ。
2021年に開催された、乃木坂46フォーシーズンズに来館してみたが、そちらも素晴らしかった。
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アイドルはどちらかというと「エンタメ」寄りになってしまうのだけれど、エンタメは消耗されるので浮き沈みが激しい印象がある。
一方で「アート」は、時代を越えて評価されることが多く消耗されない。例えば、昔の名曲がいまだにカバーされてるように「名曲は錆びない」のが分かりやすい例である。
アイドルのエンタメとアートについて詳しくはこちらをご覧ください
乃木坂46は「エンタメとアート」を上手く活用している稀有なアイドルグループではないだろうか。
これからの作品にも期待したい。