
先日、乃木坂46春夏秋冬/フォーシーズンズ(東京国立博物館)に行ってきました。
乃木坂46は国民的アイドルですが「アーティスト志向が強い」グループに感じます。
アイドルファンの中には『アイドルにアーティスト性はいらない』という方も存在します。AKB48グループはエンタメで人気していったグループだからです。
そこで今回は、アイドルに「アーティスト性は必要なのか?」「エンタメとは何なのか?」を考えてみたいと思います。
エンタメとは
エンタメは「エンターテイメント」の略で「人々を楽しませる娯楽」を指します。
楽しみ・気分転換・気晴らし・遊び・息抜き・レジャーなども類語とされています。
エンタメが「楽しむためのもの」であるなら、感動的なアイドルのドキュメンタリーや映画はエンタメではないのでしょうか?
人が悲しい気持ちになるようなネガティブな作品に触れるのは「泣いてスッキリできる」のでエンタメの1つといわれています。
「エンタメ視聴者」は受け身でいい
エンタメは楽しむものなので、視聴者は受け身で楽しむことができます。
アイドルファンのなかで『アイドルにアーティスト性はいらない』という人の理由は「受け身」でいたいところが大きいのでしょう。アイドルの活動やライブ・動画配信などを受け身で気軽に楽しむことができるからです。
一方で「アート」は受け身では本質を理解できないといわれています。あとで、解説します。
「エンタメ」は面白くなければ淘汰される
エンタメは「受け身で楽しむことができる」ので多くの人に愛されています。
しかしながら、エンタメは面白いものだけが残り「つまらないものは無くなっていく」という一面があります。
以前は「面白いもの」であったのですが「人々に飽きられてつまらないもの」となることがあり、エンタメはつねに新しいこと(古いもののリバイバルでも可)が求められます。
アイドル業界のエンタメ例
スター誕生
1971年~1983年の12年間にわたって放送された、日本テレビの視聴者参加型オーディション番組です。デビューした歌手で有名な方は、森昌子さん、山口百恵さん、桜田淳子さん、ピンクレディー、小泉今日子さん、中森明菜さんなど。
歌唱力が基本であり「アーティスト性強め」番組には「エンタメ」性がある
おニャン子クラブ
1985年にフジテレビのテレビ番組「夕焼けニャンニャン」から誕生した女性アイドルグループ。番組内のアシスタントとして同時に芸能界デビューし「セーラー服を脱がさないで」がヒットしてブレイク。秋元康氏が関わっており、AKB48グループの原型ともいえます。
有名な方は、MCのとんねるず、国生さゆりさん、渡辺美奈代さん、渡辺満里奈さん、工藤静香さん、高井麻巳子さん(秋元康氏と結婚)など。番組・メンバーとも「エンタメ性強め」
おニャン子クラブとは対照的に、斉藤由貴さん、中山美穂さん、後藤久美子さん、酒井紀子さん、森高千里さん、西田ひかるさんなど、ソロで活躍するアイドルやバラエティー番組で活躍するアイドル「バラドル」が登場しました。
スター誕生時代では「歌唱力」が基本で「歌手からアイドル」と呼ばれる存在になりましたが「夕焼けニャンニャン」やおニャン子クラブ登場後は「人間性」「愛嬌」「バラエティー能力」なども評価されるようになりました。
*歌唱力が低い方でも「アイドルになれる時代」になりました
モーニング娘
1997年、テレビ東京「ASAYAN」のオーディション企画「シャ乱Qロックヴォーカリストオーディション」の「落選者」から選抜された5人により結成されインディーズCDシングル「愛の種」を5日間で5万枚売り切る条件を達成しメジャーデビューを果たします。
ほぼ全楽曲の作詞・作曲をサウンドプロデューサーのつんく♂氏が手掛けており「アイドルと有名プロデューサー」の形の元祖といえます。
モーニング娘は国民的アイドルとなりました。
番組・メンバーとも「エンタメ性強め」でしたが、主要メンバーが卒業しグループ人気が低迷すると共に「ダンス・歌唱力・表現力」などに力を入れている印象。
AKB48グループ
「おニャン子クラブ」で一世風靡した秋元康氏が総合プロデュースを手掛ける。
「会いに行けるアイドル」というコンセプトを基に、各地方にグループの専用劇場を持ち「劇場公演」を実施するほか、販促イベントとして各地で握手会や写真会を開催するなどのフォーマットでの活動を行う。
また、姉妹店(SKE,NMB,HKT,NGT,STU)は各地域を拠点とするローカルアイドルの側面も持つ。
AKB48グループは国民的アイドルとなり、2011年以降は日本国内だけでなく、東南アジアや東アジアを中心に海外進出も果たした。
「おニャン子クラブ」のオーディション形式(歌唱力だけではない)に「会いに行けるアイドル」というコンセプトをプラスし「選抜総選挙」ではファンがメンバーを投票で選ぶという斬新な企画を打ち出し「日本エンタメ・アイドル界の頂点を極める」
AKB48の主要メンバーが卒業し人気が低迷。11年連続で出場した「紅白歌合戦」だったが2020年に落選。
坂道系グループ
坂道系グループは「乃木坂46を筆頭とする櫻坂46(旧欅坂46)日向坂46」グループ
乃木坂46は「AKB48の公式ライバル」のアイドルグループとしてデビューしたが、AKB48と差別化する必要があり「楽曲・MV・個人PV」などでアーティスト性に重点をおいている印象のグループ。
2021年にデビュー10周年を迎え、国民的アイドルグループとなった。
乃木坂46メンバーは「歌唱力の高さ・ダンスや雑誌モデルとしての表現力・舞台経験からの演技力」など、アーティストとして突き抜けた才能を発揮している。
握手会(コロナ禍ではお話会)はAKB48のスタイルを取り入れているが、SNS使用に制限があるなど「高嶺の花」としてのアイドル像を貫いている。
2018年には、北野天満宮にて「現代美術家とのコラボ展」2019年には「乃木坂46だいたいぜんぶ展」を開催し乃木坂46のアートワークを披露した。2021年は「乃木坂46フォーシーズンズ」を表慶館で開催し、今までのアイドルグループとは違う「アーティスト性」を前面に出している。
10周年を迎え主要メンバーが相次いで卒業していくなかで、乃木坂46が世代交代を成功しグループ人気し続けることができるのか?に注目です。
一方で、アート(芸術)について考えてみましょう。
アート(芸術)とは
芸術(アート)とは「表現者あるいは表現物と鑑賞者が相互に作用しあう」ことなどで、精神的・感覚的な変動を得ようとする活動を指します。
難しい言い回しですね。
アート(芸術)を簡単にいうと「楽しませることが目的ではない」といえます。
喜びや悲しみ、苦しみや怒りのような感情、奇妙や不思議といった「言葉で表現しにくい感覚」を呼び起こすためにアートは存在するといわれています。
なぜ「アート」が大切なのか?
なぜ「アート」が大切なのか?
落合陽一さんが著書のなかでこう述べられています。
アートを学ぶことで審美眼の多様さや普遍性、文脈への接続性、そして物事の複雑性を理解できるからです。日常生活やビジネスはどんどんシステム化し、巨大かつ複雑になってきています。
その巨大で複雑なシステムの中からイノベーションを起こすには、観察力を養い、今あるシステムや常識を疑い、それを超えるための自分の文脈の構築や審美眼を備えた深い思考が必要になります。それが「アートの要素」なのです。
『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』より引用
アートは、作者による「制作した意図」はありますが、それのみが正解ではなく受け手側が「感じたこと」を大切にすべきです。
それは『審美眼の多様さや普遍性、文脈への接続性、そして物事の複雑性を理解できる』ことを育み、アイドルファンの立場でいえば「寛容さ」を身につけることに繋がるのではないでしょうか。
また、アイドルグループ運営とファン共に『イノベーションを起こすには、観察力を養い、今あるシステムや常識を疑い、それを超えるための自分の文脈の構築や審美眼を備えた深い思考が必要』です。
例えば、既存のアイドルシーンの「メンバーとファンの距離が近いシステム」を起因とする弊害、メンバーの恋愛禁止やプライベートを消費するなどの「メンバーに対する抑圧的な常識」にイノベーションを起こすには「アート」が必要といえます。
つまり、アイドルグループがアートを意識した作品を発信することは、受け皿であるファンの「寛容さ」を育むだけでなく、アイドルグループが他のグループと差別化することになるでしょう。
現在人気しているアイドルグループに共通しているのは「アート性」にように思います。
アート(芸術)は「受け身」で心が動かない
エンタメを鑑賞する場合は「受け身」でも感動したり楽しむことができました。
一方、アートはエンタメとは違って「受け身では心が動かない」といわれています。
表面上の綺麗さや美しさなどは理解できるかもしれませんが、アートを鑑賞するときは「作品に歩み寄る」必要があります。
作品に歩み寄るとは「作者・作品の作られた理由やメッセージを汲み取る」必要があります。なので、視聴者・鑑賞者が『歩み寄りたい』と思うほどの魅力が必要といえます。
アートは提供者と受け手側の双方で成り立つことなので、多くのアイドルグループは「エンタメ」を軸としアート性を発信することは少ないのです。
アートは時代を超える
エンタメは『面白くなければ淘汰される』と述べましたが、アートは作られた作品の時代に関係なく現代でも評価され続けています。
わたしがアート性のある「坂道系グループやアイドルメンバーが好き」なのは、時代や一時の流行りで終わらないからです。
一方で、アート作品を「表面上の綺麗さ美しさにより良し悪しを判断する」と、本来の評価基準である作品の意図や背景がないがしろにされることがあります。
作者が没後にアート作品として高く評価されるのはこのためです。アートは、ものによっては不快な気持ちになる物もあり『こんな物はアートじゃない』という一言で終わらせてはならない側面があります。
坂道系は「エンタメのアート化」を貫いている
エンタメ作品の中には「アート的なテイストが加えられているもの」が存在します。
人気な作品でいえば「ジブリアニメ」
エンタメの「アート化」を『もののけ姫』で解説
ジブリアニメは「一見すると子供向けのエンタメ」に感じますが、作品毎に「作者の意図」があり鑑賞者が子供から大人になるにつれ感じ方が違うでしょう。
例えば「もののけ姫」
映画「もののけ姫」は一見すると「人間vs自然」のように感じますが、一方を「善・悪」と明確に線引きせず「勧善懲悪」な物語となっていません。登場人物の「立場」「価値観」から、それを読み取ることができます。
- エボシ御前…石火矢という武器を持ち森に侵攻し「もののけたちを殺戮する」一方で、身売りされた女性をタタラ場に引き取り、差別や偏見の目で見られる病気の患者にも優しく声をかけています。また、タタラ場のみんなに仕事を与え、山を削り木を切るのも生活のために行っていることです。エボシは頼れるリーダーであり救世主のような存在です。
- サン…自然を荒らした人間に強い恨みを持ち『人間を追い払うためなら命などいらぬ』と言い放つまで、その目的を「正しいこと」であるかのように追求します。
- モロの君…サンを実の娘のように愛しており『アシタカと生きる道もあるのだが…』など、サンの行く道を心から心配しています。
また、争いは「人間vsもののけ」という単純な構図にとどまらず
「野武士たち・タタラ場の鉄を狙うアサノ公方配下のサムライたち・シシ神の首を狙うジコ坊たち唐傘連」などが加わり、タタラ場に残っていた者たちも戦うことになります。
また、自然界でも意見や考え方が割れ「人間ともののけ」たちを巻き込んだ争いは「カオスな様相」で描かれています。
このように映画「もののけ姫」からは、現実にある戦争や集団生活の「どちらかが悪いと単純に説明できるものではなく、それぞれが様々な価値観・事情を持っており、どうしようもない憎しみや軋轢を生む」姿が読み取れます。
また、同じ「人種・生活圏」でも「必ず価値観が同じであるわけではない」という側面も描かれています。
以上の解釈は幼少期では理解できません。しかしながら「心を動かされた」経験はありますし、残酷なシーンなどは記憶に残っています。
このように「ジブリ作品」には、エンタメでありながら「アート性」を秘めている(視聴者が考え作品に寄り添う必要がある)といえます。
何回もテレビ番組で「同じ作品が放送される」理由の1つです。
坂道系グループの「エンタメのアート化」
アイドルの中にも「エンタメとアートの2つを兼ね備えるグループ」が存在します。
乃木坂46を筆頭とした坂道系グループです。
坂道系グループの特徴として「楽曲のメッセージ性・MVの美しさ・ダンスによる表現力・世界観」があります。
ただ楽しいだけでなく、悲しみや怒りの感情も表現されダンスにも意図を込めた作品が多くみられます。
現代のMV(ミュージック・ビデオ)は以前のCD販促的な役割だけでなく「アーティストの世界観を表現する強いツール」となり、楽曲・衣装・ダンス・演出などによる「総合芸術」といわれています。
*総合芸術まで昇華できているグループは少ないですが…
現代では「CD売り上げのみ」のオリコンチャートより「動画再生回数・楽曲ダウンロード数」なども加味されたビルボードランキングが重要視されており「MVの作品としての価値」が以前よりも重要になっています。
坂道系「アート性」アイドルはAKB48のおかげ?
さきほども述べましたが、坂道系グループが「エンタメのアート化」路線を進んだ理由にAKB48グループの存在が考えられます。
国民的アイドルグループ時代のAKB48は「エンタメ中のエンタメ」と感じるグループでした。そのような「エンタメど真ん中」のAKB48グループと坂道系グループは差別化する必要がありました。
ソニーミュージックの強みを活かし「楽曲・MVのクオリティの高さ」というアート的な要素を加え、エンタメとアートを兼ね揃えるアイドルグループが誕生しました。
乃木坂46のアート性は2018年京都日本フェスティバルにて、北野天満宮とのコラボという形で世間に知られるようになりました。
3年前にわたしが訪れた記事はこちら
AKB48グループの活動のなかでも「アート性」を意識したイベントが開催されています。
AKB48グループ「歌唱力王決定戦」です。人気やビジュアル・スタイル・先輩後輩やキャリアではなく「歌唱力」のみの戦いです。エンタメを軸としたAKB48グループらしい企画といえます。
しかしながら、AKB48グループが「アート性」をあまりに追いすぎると坂道系グループと似たような存在となるため「AKB48グループらしさ」を貫くなら、AKB48グループ総選挙やリクエストアワー、AKB48グループ紅白歌合戦などを再開すべきだと思います。
AKB48グループ総選挙を再開するなら「バージョンアップ」する必要があります。まず地方姉妹店(AKB48含む)により予選を行い、各グループのシングルで上位10名を選出。各グループ上位10名が本戦(AKB48グループ名義のシングルで予選突破したメンバーによる構成)に進みガチで選挙することにより「死票」を少なくするなど改善する必要があるでしょう。
- 各支店のCDが売れる(予選用)
- AKB48グループのCDが売れる(本戦用)この時点で「予選通過メンバーはAKB48グループ名義の作品に参加できる」メリット
- AKB48グループ総選挙による「センターや選抜」アンダーなど組み分けしたCDを発売
以上のように「エンタメは飽きられる」のでバージョンアップが不可欠です。AKB48グループ衰退の原因の1つはエンタメのバージョンアップを怠ったからであるといえます。
「エンタメとアート性」を兼ね揃えた乃木坂46が国民的アイドルとなった後、アイドル業界はどのように進むのでしょうか。
まとめ:これからのアイドル業界は「ウェブ3.0」で変わる
今回は「アイドルのエンタメとアート性」について考えてみました。ポイントをまとめます。
➀エンタメは「楽しませる」ことが目的であり、視聴者は「受け身」で楽しむことができる。しかしながら、エンタメは「面白くなければ衰退し淘汰される」ので、つねにバージョンアップし続ける必要がある。
②アートは「楽しませる」ことが目的ではなく、視聴者は「受け身」では楽しめない。視聴者は「作品の意図を汲み取る」必要があり難しい印象があるが「感性を磨く」ことに役立つ。また、優れたアート作品は時代を経ても「劣化しない・飽きられない」というメリットがある。
「エンタメとアート」に極端に偏るのではなく上手に表現しているのが、乃木坂46を筆頭とした坂道系グループだと思う。
これからのアイドルを含む芸能界は「ウェブ3.0」により、既存の古い体質やシステムが一変すると予想されます。
ウェブ3.0とは、ブロックチェーンを主軸としたもので「仮想通貨やNFTトレカ」などがアイドルと相性が良いです。
実際に、SKE48やSTU48・NGT48・HKT48もデジタルトレカを販売しています…が、未だにアイドルのデジタルトレカが大きな話題になっていません。
その原因は「デジタルトレカなどを使える場所が無いから」です
SKE48のトレカはブロックチェーンゲーム「クリプトスペルズ」で使用できるようですが、アイドルとは全く関係ないゲームです。
アイドルと関係ない「どのようなユーザーが集まっているかも分からないゲーム」で特定のメンバーのカードを使うことに抵抗があるようで、イマイチ盛り上がりに欠けています。
例えば、乃木坂46のゲームアプリ「乃木坂的フラクタル」のようなメンバーを集めるゲームとNFTトレカは相性が良さそうです。
また、ファンがコレクションした「NFTトレカ・アート」などを展示できる個人のルームも必要ではないでしょうか。
NFTアートやアイドルと「ウェブ3.0」については別に記事を書きたいと思います。